直腸脱とは
肛門から、直腸が脱出する病気で、痔核(いぼ痔)とは異なります。高齢女性に多い病気ですが、稀に男性や若年者にも見られます。主に肛門周囲の筋肉(骨盤低筋群)による直腸の支持が弱くなることで起こり、高齢女性に多いのは出産によって骨盤低の筋肉が弱くなるからではないかと推測されています。薬で治すのは困難で、多くは手術が必要となります。ただし子供の場合は成長とともに自然に治ることがほとんどです。
症状
肛門から直腸が脱出します。排便の時だけ脱出する程度のものから、症状が進行すると立っている時や、歩いているときにも脱出するようになり、更には何もしなくても常に脱出したままになることもあります。大きなものでは20cm以上脱出してきます。脱出が大きくなると、高度の便秘や便漏れ、疼痛、出血をきたす例も少なくなく、日常生活が困難となるため早めの治療をお勧めします。
治療
手術が必要になります。大きく分けて①経肛門手術(脱出した直腸を肛門から中へ押し込むタイプの手術)と経腹手術(脱出した直腸をお腹側から引き上げるタイプの手術)に分けられ、それぞれのタイプの中にも複数の手術方法があります。経肛門的手術は腰椎麻酔(下半身麻酔)で行うため体への負担は少ない一方、再発が多く(20%~40%)、経腹手術は全身麻酔が必要であるため体の負担が大きくなる一方、再発は少ない(10%以下)という特徴があります。どちらのタイプの手術を選択するかは、患者様の希望、入院期間、生活様式等を考慮して相談しながら決めていきます。
直腸脱は治る病気です
本来は外出したり、旅行したりできるはずの元気な高齢者が、直腸脱のせいで引きこもりになったり、さらには寝たきりに近い状態になってしまうケースがあります。何の病気がわからず、治る病気とも知らず、人知れず悩まれている方も多くいらっしゃるものと考えます。また高齢であることを理由に治療をあきらめている方もいらっしゃるかもしれません。直腸脱は手術で治る病気です。肛門からの脱出が痔核なのか直腸脱なのかは専門家でなければなかな診断ができませんので、脱出を自覚された方は是非一度診察を受けていただくことをお勧めします。
文責 松田 聡
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