静岡県で4番目の大腸がん手術件数
「松田病院」と聞くと、多くの方が「肛門科で有名な病院ですね」と反応してくださいます。確かに、松田病院では年間約1200件の肛門手術を行っており、全国的にも屈指の肛門専門病院です。でも、一方で、大腸がんの手術も数多く行っている病院であることはあまり知られていません。実は静岡県で、総合病院を含めて4番目に多く大腸がんの手術を行っているのです。(表1 読売新聞表抜粋)これは、肛門からの出血が心配で受診された患者様の中に、大腸がんの方が少なからずいらっしゃるからですが、最近では、他の病院で大腸がんの診断を受け、わざわざ松田病院に紹介されたり希望されてやってこられる方が少なくありません。
そこで今回は、大腸がんの基本的な事項をお伝えします。
大腸がんは比較的たちのいい「悪性腫瘍」
肛門から約15㎝までの「直腸」と、それより奥の「結腸」を合わせて「大腸」と呼びます(図1 大腸の図)。ですから、「直腸がん」も「結腸がん」もともに「大腸がん」です。大腸がんは大腸の内側表面にある「粘膜」から発生します。(粘膜より下の組織から発生する腫瘍は「がん」とはよびません。)
「がん」は、「悪性腫瘍」です。たまに、「わたしの大腸がんは悪性でしょうか?」と質問されることがありますが、これには「悪性です」と答えるしかありません。しかし、体の他の部位から発生するがんとくらべると、まあまあおとなしい部類に入ります。(図2 部位別5年生存率のグラフ)その意味では「比較的たちのいい」悪性腫瘍といえます。
図1 大腸の図 |
図2 部位別5年生存率のグラフ |
検診部 (平成3年より平成22年までの確認データ131名より) |
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早期大腸がんは内視鏡で切除できる
粘膜から発生して、まだ深くまでいっていない段階のものを、「早期がん」と呼びます。(図3) 早期がんのほとんど※は、内視鏡で切除することができます。最近では、内視鏡治療の方法も進歩しており、以前では手術が必要とされた大きな早期がんも、内視鏡で切除できるようになってきました。(図4 ESD症例写真)(※早期がんでもリンパ節に転移することがあるので、その場合には手術が必要となります)この段階で適切な治療を受ければ、ほとんど治ってしまいます。松田病院では、年間約50件の大腸がん内視鏡治療を行っています。
一方、大腸がんが腸の筋肉まで入り込んでしまったものを、「進行がん」と呼びます(図3)。この段階になると、リンパ節を含めた腸を切除する必要があります。松田病院では、年間約120件の大腸がん手術を行っています。
図3 早期がんと進行がん |
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進歩する大腸がんの抗がん剤治療/遺伝、危険因子
リンパ節に転移が認められると、完全に手術で取りきれた場合でも、一般に、後から追加の抗がん剤治療が必要となります(術後補助化学療法)。また、手術で取りきれない場合や、手術したあとに再発してきた場合にも、多くの場合、抗がん剤治療が必要となります。
従来、大腸がんは抗がん剤が効きにくいと言われていました。ところが、近年、次々に新しい薬が開発され、それらの組み合わせの研究なども進み、かなり効果的な治療が行われるようになってきています。代表的な薬剤は、オキザリプラチンⓇ 、イリノテカンⓇ 、アバスチンⓇ 、アービタクスⓇ などです。松田病院でも、日本で承認発売されている最先端の薬剤を用いた抗がん剤治療を受けることができます。
【血縁に2人以上の大腸がんがいたら要注意~大腸がんと遺伝について】
大腸がんの中には明らかに遺伝によるもの(家族性大腸腺腫・遺伝性非ポリポーシス大腸がんなど)が約5%あり、また、同じ家系内に多く発生するものが約25%あることが知られています。一般に、血縁関係者に2人以上大腸がんや胃がんの人がいる場合には、45歳くらいから大腸がん検診を受けたほうがいいといわれています。
【アルコールと赤身肉は大腸がんの危険因子】
これまでのさまざまな研究から、大腸がんになるリスクを下げることが確実とされている因子は運動です。また、食物繊維を含む食品や牛乳などもほぼ確実にリスクを下げるといわれています。逆に、確実に大腸がん発生のリスクを高めることがわかっている因子は、赤身肉(豚肉・牛肉)、アルコール、肥満などです。
「野菜や繊維を多くとり、肉を食べるなら鶏肉中心にして、アルコールはできるだけ控える。適度な運動をして、太りすぎに注意する。」これが、大腸がんを防ぐ生活のようです。
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