CT
CT検査では主に転移の有無をチェックしています。特に、肺や肝臓への転移を重点的に調べます。造影剤に対するアレルギーのない方や腎機能が正常に保たれている方には造影剤を用いたCT検査をします。転移をより見つけやすくするためです。先にお話ししたように肝臓や肺に転移があれば4期ということになり、治療方針を決める上でとても重要な検査です。
CT注腸はおしりから空気を入れて腸を膨らませてからおこなうCT検査です。この検査で大腸(1メートル以上の長さがあります)のどの部分に癌ができているのかを知ることができます。当院ではおしりから入れる空気に二酸化炭素を用いています。腸から自然に吸収され、検査の苦痛が少なくなります。大腸内視鏡検査の直後に行うこともあります。
*腫瘍マーカーについて
大腸癌ではCEAなどの腫瘍マーカーといわれる血液検査で調べることのできるマーカーを検査しておくことがよくあります。このマーカーは大腸癌だと必ず上昇するわけではありませんので癌のスクリーニングには用いられていませんが、数値の高い方はマーカーの変動をみることで治療効果の目安となることがあります。また、高くなかったマーカーが上がってくると再発を疑うこともあります。
治療
内視鏡治療、手術、抗癌剤治療と緩和ケアが大腸癌の主な治療です(直腸癌や再発した場合には放射線治療が行われることもあります)。
内視鏡治療
内視鏡治療で治せる癌の場合はEMRやESDと呼ばれる治療が行われます。(シェーマ5)
病期のところで大腸の壁の層について説明しましたが、内視鏡治療は深達度がSM(粘膜下層)までの癌が対象となります。理由は癌の深達度とリンパ節転移の頻度との関係にあります。癌は深くもぐればもぐるほど(“しんじゅん”とも呼びます)リンパ節への転移の可能性が高くなるのです。SM癌がその分水嶺(分かれ目)となります。SM層よりも深くもぐっている場合には手術で癌のできた大腸とリンパ節を一緒に取り除くことが癌の標準治療となっています。
この分水嶺となるSM癌にはリンパ節への転移が疑わしいSM癌と転移の心配の少ないSM癌があります。内視鏡による表面構造の観察と内視鏡で切除した癌を病理検査で詳しく調べることで転移の可能性を予測することができ、手術が必要か(“追加腸切除”と呼んでいます)、手術をせずに様子を見ていいのかを判断しています。“経過観察”と呼ばれています。
“内視鏡治療で治せるか”、“手術が必要か”は内視鏡診断にかかっていると言っても過言ではありません。当院ではこの内視鏡診断、治療を積極的に行なっている病院の一つで、年間55例程度の大腸癌を内視鏡で治療しています。
大腸がんの手術
手術の大原則は癌の“根治”です。手術は癌が取りきれたときに最大効果を発揮します。癌が手術で取りきれたと判断された場合に「うまく取れましたよ(“根治”できました)」とお話しすることができます。
しかし、病気が進んでいて癌が手術ではとりきれない場合もあります。このとき、治療の主役は抗癌剤治療となり、手術はわき役となります(腸閉塞や出血予防、予後改善目的で手術が行われることはあります)。手術で取りきれるか取りきれないかはCT検査などで判断します。このことを“手術適応”と呼んでいます。手術では痛みや体力の低下などの負担がかかります。その負担に見合った効果が得られる場合にのみ外科医は「手術適応がある」と判断し、手術をお勧めしています。
癌のできた腸(“原発巣”と呼びます)を切除しますが、癌の手術で最も大事なことは“リンパ節郭清”です。癌でなければ腫瘍のできた腸の切除のみでいいわけですが、癌の場合は癌ができた近くのリンパ節を腸と一緒に切除します。このことを“リンパ節郭清”と呼んでいます。切除するリンパ節の範囲(広さ)は癌の深さ(大きさではありません)で決められています。また、切除するリンパ節の範囲で切除する腸の長さも決まってきます。(シェーマ6)
どの部分の腸を切除するのかは癌のできた部分によって決められています。癌のできた部分が肛門に近いと人工肛門が必要となることもあります。したがって、直腸癌(肛門に近い部分の大腸)では人工肛門のことを考えておくことが必要です。直腸以外の大腸を結腸とも呼びますが、結腸癌の場合は(腸閉塞など特殊な場合を除いて)人工肛門の可能性はありません。また、直腸癌でも肛門からのある程度の距離があれば人工肛門の必要はありません。担当外科医と相談して術式(人工肛門となるか、人工肛門は必要ないか、一時的に人工肛門を作っておいた方がよいかなど)は決めています。(シェーマ7)
※手術技術の進歩により肛門近くに癌ができてしまった方でも人工肛門をつくらずにすむこともあります。個々の症例に応じて担当外科医と相談して決めています。この術式はISR (intersphincteric resection:肛門括約筋間切除術)と呼ばれています。
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シェーマ6 |
シェーマ7 |